読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

星雲と半風子 

本の感想とか書きます。 a louse in a nebula

『IT'S OK!!』感想(1)「いつか…、」

IT'S OK!!

IT'S OK!!

  • 作者: 犬義,拓ヒラク,晋太郎,村田ポコ,おくら,野原くろ,市川和秀,SUV,龍谷尚樹,ワルダクミ★メガネーズ
  • 出版社/メーカー: 密林社
  • 発売日: 2012/10/14
  • メディア: コミック
  • この商品を含むブログを見る

 

セクシュアリティで悩んでいても大丈夫! セクシュアリティを決めなくても大丈夫! な、若い子に向けたコミックエッセイ。

 

セクシュアリティとあるけれど、中身はゲイ(かもしれない)か、そのゲイの子のそばにいる ゲイじゃない男の子(いまのところ)のお話。レズビアンやバイセクシュアルやトランスジェンダーやら、セクシュアリティにもいろいろ違いはあるけれど、これらの描写はない。作家さんはゲイ系で書いてる人だからなー。思うに「ゲイ」とはっきり明言するよりも、「セクシュアリティ」って大きいカテゴリーで、(ある意味では)ぼかしたほうが、自分がいまどうなのか悩んでる人にとっては(そしてゲイということに心理的な抵抗がある人にとっては)手に取りやすいのかもしれないからなあとも思った。

 

 

さて内容は、9人の作家によるコミックあり、小説あり、イラストありのアンソロジー本になっていて、それぞれの作家による『IT'S OK!!』のメッセージが描かれている。

 

僕も「SUMMER CAMP」のサークルで、少年が主人公で、少年の性(特にゲイであるということ)をテーマにして書いているので、『IT'S OK!!』は非常に面白く読んだ。いやほんと満足だ…!

 

特に、「いつか…、」(拓ヒラク)、「バイバイシンドローム」(おくら)、「あの頃の君に」(晋太郎)の作品がよかった。

 

「物語の視点」に注目したい。どこから見てて書いているのか? ということ。だいたい、「作者視点」「未来からの視点」「現在の登場人物の視点」に分かれるんだけど、ゲイかも?って悩んでる10代に向けのこのお話では、この視点のあり方がものすごく大事になってくる。

 

「いつか…、」は、主人公はノンケ(たぶん)の男の子。この子の視点から、ゲイの友達を見つめる。

 

主人公がコンビニで立ち読みをしていて、ふと顔を上げると、向かいのカフェに友達の格(いたる)がお茶しているのを見つける。

 

(へえ…一人でカフェとか入るんだ…知らなかったな…)

(あ…なんだ連れがいたのか… お父さんかな? お父さんにしては若い気も…)

 

高校に入って最初に仲良くなって、一番仲がいい友達の格くんのことを、主人公は思い出す。

 

「え? 告白? 例の本屋さん?」

「たぶんダメだと思うけど…玉砕してくる!」

「玉砕しなかった!! 付き合ってくれるって!!」

(なんだよその緩みきったアホ面は…)

 

カフェで知らないおっさんといる格くんは、あの時と同じ緩みきった、幸せそうなアホ面をしている……。

 

コンビニのガラスが、そのまま届かない心の壁で、主人公はそれに寂しさを感じつつ、「ちゃんと紹介してくれよ、いつかな……」とそっとうつむいて本を棚に戻すのでした。

 

彼女どんな人? って聞かれて、

 

「眼鏡かけててー どっちかっていうと地味で… 真面目そうだけど…どことなくだらしな——— あ、愛嬌があるっていうか」

 

って、彼氏を彼女に置き換えつつ話す……みたいな感じとか好きです!

ああこれ僕も経験あるわー。年上(10才以上)と付き合ってたから、熟女好きなんだな! って言われたりしてね。熟女じゃねえよおっさん好きなんだよ!

 

ゲイ当事者じゃなくて、そのゲイの人の友人の視点にすることで、ゲイだと言えなくて秘密にしていること、そして友情のありかたや寂しさといったものが浮かび上がるところがよかったです。こういう思いもしなくて、友達に素直に言えるような世の中になるといいのにね。まじで。

 

拓ヒラクさんのサイト