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星雲と半風子 

本の感想とか書きます。 a louse in a nebula

小説『遠きにありて吠えるもの』藤丸心太 (Kindle版+書籍版通販)のお知らせ

このブログではお久しぶりです。

 

最近は、漫画家のたかさきけいいちさんと組んで、同人誌即売会でオフセット本やコピー本を領布しているのですが、先だって開催された野郎フェス2016で、小説オフセット本を出しました。

 

犬獣人と人間が、宇宙船で出会うお話です。

相棒になって、宇宙船の中で起きるごたごたを解消するバディものです。(でもちゃんともふもふいちゃいちゃしたりします)

 

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『遠きにありて吠えるもの』

 

あらすじ:宇宙飛行士の太郎が目をさますと、そこは見知らぬ宇宙船の中。そこには、ソウヤと名乗る人工知能と、ケンネルと名乗る犬獣人がいた。ケンネルは自らを「人間」だと名乗り、こちらのことは「人間ではない」と言う……? 太郎は宇宙船での生活を通して、少しずつ人工知能の倫理ロックを外して、人工知能に「人間」として認められていき、ケンネルとも捻れた体の関係を持つようになる。しかし、宇宙船にはある任務が隠されていて、かつて太郎がいた移民船も近づいて来ているのだった。二人が選ぶ選択は……。

 

モナーでSF好きなので(ゲイは大前提として)、好きなものを詰め込んでなおかつ読みやすいものに仕上げられたと自負しています。

 

 

何より、たかさきけいいちさんの表紙がとても良いです。

書くときはいつもぼんやりとしかイメージしてないし、たかさきさんにも大雑把にしかいつもたかさきさんが書いてくれると、いつも「これだよ!」って思う。

 

書籍版(オフセット版)のほうは、ゲイ向け商品を販売しているビックジムさんで通販しています。

同人誌 :: (小説)遠きにありて吠えるもの【少量販店】

 

また、Kindle版も販売してます。こちらのほうは、挿絵は割愛しています。しかし、書籍版からの若干の加筆修正と、電子書籍版のあとがきがあります。

 

遠きにありて吠えるもの

遠きにありて吠えるもの

 

 

 

このブログも、もっと頻繁に更新せねばですね。

完結した「Wombs」の感想・考察とか、読んで面白かった本とかそういうことこれからはまめに書こうと思います。

 

 

『夏休みのあいだ』あとがきにかえて

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2014年7月6日にリリースした、『夏休みのあいだ』

 

表紙は、たかさきけいいちさんに描いてもらいました。

 

たかさきさんの漫画を初めて読んだのは、爆男(ばくだん)という、ゲイ漫画アンソロジーでした。ゲイ漫画は基本は筋肉!エロ!なものが主流なのですが、たかさきさんの漫画は、ちょっとその主流から外れた、登場人物たちの繊細な内面をその漫画に込めていて、いっぺんに好きになりました。

 

で、Twitterで繋がって、漫画や作品の趣味が結構合っていることがわかり(僕もたかさきさんも藤子・F・不二雄先生が好きです)イベントの売り子をしたりして仲良くなり、今回表紙をお願いしました。

 

表紙イラスト、すっごく予想通りというか、僕が思ってた以上に僕の作品の登場人物たちで、本当にうれしかった!

 

メインの「夏休みのあいだ」の二人の少年は、中学二年生なんですが、中学生特有の儚げな感じを出してもらえてとてもうれしかった! 表情がすごくいい。本文の迷っている男の子の感じを十二分に引き出してくれて、もうほんとよかったです。

 

 

デザインは、加藤悠二くんにお願いしました。

 

加藤くんとは、加藤くんが企画した「SF3」っていうセーファーセックスアンソロジーでコンドーム擬人化話を書いたのと(売り切れ中。このアンソロの続刊にあたる、「IT'S OK」も品切れっぽい)

 

文フリで販売した同人誌『SUMMER CAMP vol.5』で文字組とロゴを頼んだりして、仕事ぶりを知っているのもあって頼みました。

ばっちりジュブナイルっぽく(ちょっとパロも入れて)やってくれました。良い仕事するなー加藤くん。

 

 

さて本作『夏休みのあいだ』。

僕はもともと「少年と夏」というテーマで『SUMMER CAMP』っていうアンソロジーを晋太郎くんたちとやってて、そのVol.1で書いたのが表題作の「夏休みのあいだ」でした。

 

夏休み、少年が図書館で小学校の友達と出会って、AIをつくる。AIは感情をつくるために人間の記憶を集めている。少年たちは二人で「夏休みの記憶」をつくるために一緒に過ごす……

 

というお話です。Kindle版に収録にあたり、お父さんお母さんと話をしてバスに乗り込むシーンとか、あとちょこちょこ加筆・修正しました。

 

あとがきなので個人的な話をしますが、「バスに乗れなかった夢」は中高生のころよく見ていました。大人になった今では、なんで夢の中でも乗れなかったんだろう、と思うのですが、自分にとっては誰もそんなこと教えてくれなかったし、自分でもそうできないだけの理由があったんだなー、と、書いていてぼんやりと思い出したりしましたよ。

 

「ビニール傘と里山くん」

ビニール傘で空を飛ぶ世界で、まだ仲良くなったばかりのクラスメイトと深夜に飛ぶ話。

これは、生まれて初めて書いた小説らしい小説かもしれない……。

Twitterでばばっと勢いで書いたんだけど、思ったより好評なリアクションをもらい(ただしフォロワーも10人減った)、気が大きくなった作品です。収録にあたり、ちょこちょこ加筆しました。主に描写のところを。

 

 

「コピーは空の夢を見る」

書き下ろし。

これはいろいろ元ネタがあるのですが、「ダブル/ダブル」という、白水社から出てるもうひとりの自分を書いた作品を集めた海外小説のアンソロジーと、藤子・F・不二雄先生のコピーが出てくる話と、「勇者ヴォグ・ランバ」の作中の中でけっこう重要な技術の「コピー」です。

 

もう一人の自分が増えるということと、その場合にセクシュアリティがどう変化するのかに興味があります。

ゲイの友達のあいだでは、半ば冗談みたいに、「もし自分があのとき、○○と出会ってなかったら・告白されなかったら・ふざけてエッチなことされなかったら 今はゲイじゃなかったと思う」と話しが出ることがあって、そういう話をする人はだいたい3割くらいの確率で「そうじゃなかったら、いま俺はまだノンケ(異性愛者)のままで、結婚したり子供もいたんだろうな」と続きます。

 

僕は小さい頃から男の子が好きだったので、そういう「もし〜だったら」を考えるような時期は高校生くらいで終わったのですが、自分が小さい頃から男の子が好きなタイプのゲイじゃなくて、女の子が好きだけど男の子に告白されたらゲイになってしまうようなタイプだったらどうなるだろう? そんなふうな思想実験からこの話は始まりました。

 

結局のところ、ゲイと、そうではない指向の人間が分かり合えるかどうかというのは、この作品を書いてもはっきりしない……というか、僕ははっきりと「分かり合えるわけがない!」と思ってるのですが、それでも、分かり合えた一瞬の奇跡のようなものはあると信じたいです。

ラストで一歩踏み出した「ぼく」は、そんな希望の象徴でもあります。

 

 

「図書室のクマ」

書き下ろし。リライトのつもりが、結局違う話になってしまった……。

「SUMMER CAMP vol.3」の、「I See You」という短編を下敷きにしています。

共通項は、オグラ(Augmented Reality Glass)という、拡張現実を見るためのメガネ(早い話が「電脳メガネ」です)が普及した世界で、図書室にリファランス用のクマ型AIがいる、ということで、あとはまったく変えました。

 

いやー。本ってすごくいいですよね。

書くのものすごく時間がかかってしまったけれど、この作品がいちばん好きだと言ってくれる人がいてうれしかったです。

あと、たかさきさんが書いてくれたクマかわいい。

 

ちなみに、この話は、未来なので同性愛は当たり前になっている、という設定です。

未来の話で、(人口を増やすために男女間の結婚が強化され、同性愛は迫害された)とかいう前フリなしに、ふつうに今のジェンダー感をひきづってると、ちょっとひっかかりますよね。作風にもよるけれども。

 

次作はまたいつになるかわかりませんが、書き溜めていきたいと思いますー。

とりあえず今はたかさきさんと合同で出す本の原稿!

ではまた。

 

夏休みのあいだ

夏休みのあいだ

 

 

 

SUMMER CAMP vol.1

SUMMER CAMP vol.1

 

 

 

ダブル/ダブル (白水Uブックス)

ダブル/ダブル (白水Uブックス)

 

 

 

勇者ヴォグ・ランバ(1) (アフタヌーンKC)

勇者ヴォグ・ランバ(1) (アフタヌーンKC)

 

 

 

短編集『夏休みのあいだ』Kidle書籍販売中

どーもこんにちは。

 

Kindleにて、短編集『夏休みのあいだ』の販売を7/6より開始しました。

 

夏休みのあいだ

夏休みのあいだ

 

 誤字を修正した2版を、250円で販売しております。

 

表紙イラストは、たかさきけいいちさんにお願いしました。

題字、デザインは加藤悠二くんです。

 

内容はというと、ジュブナイルSFでリリカルホモな4編です。

少年がAIを作ったり、ビニール傘で空を飛んだり、自分のコピーを作って親友と付き合ったり、レファランス熊型AIと卒業式の日にレイ・ブラッドベリを読んだりします。

 

収録作は

 

「夏休みのあいだ」

「ビニール傘と里山くん」

「コピーは空の夢を見る」

「図書室のクマ」

 

 

です。

 

「夏休みのあいだ」は、同人誌『Summer Camp vol.1』に収録されたものを加筆・修正したもの。

「ビニール傘と里山くん」もパブーで公開しているものを加筆。

あとの2つは新作です。

 

「図書室のクマ」は、Summer Campに収録してた、電脳メガネとクマAIの話を軽くリライトして収録するつもりが、まったく別の話になってしまった。時間かかったけど、僕は気に入ってます。

 

無料キャンペーンとか値下げとかはしないつもりなので、買ってね☆(でも試し読み無料版は出すかも)

 

2013年このSFマンガがすごい

どーも。ジン太です。2013年ももう終わりですね。

世のSF漫画全部……ではないですが、そこそこは読んでる身として、今年読んだSFまんがで面白かったものを独断と偏見で紹介します。

 

 

成恵の世界』(丸川 トモヒロ) 

成恵の世界 (13) (カドカワコミックス・エース)
 

Kindleあり。 

 

学園SF。宇宙人。多世界解釈

惑星日本からやってきた、宇宙人とのハーフである七瀬成恵と、平凡な地球人・飯塚和人のラブコメSF。

……かと思いきや、ウラシマ効果で年下のお姉ちゃんが出て来たり、宇宙戦艦同士の熱いバトルが出て来たり、多世界をかけた戦い、惑星合衆国のスパイなど惑星間同士の駆け引きがあって、強烈なキャラの個性と相まってすっごく熱いSFになっていた! で、13巻でばっちり幕引きしてくれました。

 

これ、kindleで一巻だけ買って、超おもしろかったのでまとめ買いして読みました。

機族が好きだなあ。「マップス」とか好きな人は無条件ではまるのではないかしら。「ケロロ軍曹」が好きな人も。

 

 

 

 

勇者ヴォグ・ランバ』『三文未来の家庭訪問』(庄司創

勇者ヴォグ・ランバ(1) (アフタヌーンKC)

勇者ヴォグ・ランバ(1) (アフタヌーンKC)

 
勇者ヴォグ・ランバ(2)<完> (アフタヌーンKC)

勇者ヴォグ・ランバ(2)<完> (アフタヌーンKC)

 
三文未来の家庭訪問 (アフタヌーンKC)

三文未来の家庭訪問 (アフタヌーンKC)

 

 

SF。もうとにかくSF。社会派でもあり、人文学でもあり、かといって舞台はばっちりハードなSFなのがたまりません。作者も「ハーモニー」と「虐殺器官」に影響を受けたとはっきり言ってるので、伊藤計劃のようなSFとはっきり言っていいかもしれません。

 

演算して物理的に力を及ぼす「演算」や、価値観の更新を止めて、悩みをなくしてしまう「ペインフリー」、そしてそのペインフリーと戦う「覚醒派」という、設定だけでしびれるのですが、なによりすごいのは、これとどう戦うかというところまで描いているところ。いわば、「ハーモニー」後の世界と、戦い方をシュミレーションしているところです。

 

 

三文未来の家庭訪問』もすごくおもしろかった。

近未来、「生む男」という新しい性のリタが、団地の下の部屋の女の子と仲良くなる……というあらすじだけだとあれだけど、ここに注ぎ込まれたSF設定がさらりとすごく、世界を救うとかでかい話じゃなくて、女の子と仲良くなるだけどいう小さなドラマを描いているのがすごい。

作者が繰り返し描いてる、「普通でない環境に生まれ育った人間が、普通であろうと努力をする」という設定になぜかものすごく心打たれるんです。

 

 

 『ニッケル・オデオン』(道満 晴明) 

 

ニッケルオデオン 赤 (IKKI COMIX)

ニッケルオデオン 赤 (IKKI COMIX)

 

 

ニッケルオデオン 緑 (IKKI COMIX)

ニッケルオデオン 緑 (IKKI COMIX)

 

 

すべて8PのSF短編漫画。すこしSFで、奇想天外。それでいて短編漫画として完璧にまとまっている漫画。

緑のほうに収録されてる、「契約」「遊星より愛をこめて」が好き。

 

「契約」は、悪魔を呼び出して、願い事を叶えてもらう悪魔召還ネタ。

悪魔曰く、対価に魂もいらない。ただし願い事はポイント制。三人で1000ポイントを仲良く分けて、それぞれ願い事を叶える。残り1ポイントになったところで、飛行機がこちらめがけて落ちてきて、このままだとみんな死ぬと悪魔から告げられて……。

設定もオチも、まるで星新一のショートショート読んでるみたいでした。

 

「遊星より愛をこめて」は、貴重なSF/BL。毎日、学校帰りに親友と公園に行く。体の弱い親友は、公園でいつも一休みをする。だがその公園も取り壊されることになる。そこで公園に遊星爆弾が落ちて来て……。

 

短いながらもぽろりと漏らす登場人物の本音や、何気ない表情から垣間見える表情にドラマがあってものすごくいい! 

 

現在、【赤】と【緑】の二冊が発売されていて、どちらからでも読めます。

第一話試し読み↓ これは【赤】のほうに収録。 

IKKI PARA 試し読み 【ニッケルオデオン/道満晴明】

 

 

『靴ずれ戦線』(速水螺旋人) 

靴ずれ戦線 1 (リュウコミックス)

靴ずれ戦線 1 (リュウコミックス)

 
靴ずれ戦線 2 (リュウコミックススペシャル)

靴ずれ戦線 2 (リュウコミックススペシャル)

 

 

ロシア戦争SF。

第二次世界大戦時のロシアが舞台。徴兵された魔女ワーシェンカと、「非科学!」が口癖の現実的なナージャのコンビが、ロシアのあまたの妖怪・怪物や魔女と渡り合いながら、ドイツ軍と戦う……というお話。

 

かわいい絵柄で、妖怪たちもとってもかわいい。ところどころ出てくるヒゲ男がもさくてかわいいのも楽しいし、ロシア軍の細かい描写や、ロシア民話も楽しい。作者どんだけロシアが好きなんだ。

 

戦争なので、史実のとおり人はばんばん死ぬし、街も民家もどんどん破壊されていきます。かわいい絵柄ですが、ここは戦場で死は日常であって、ことさらに悲劇的に描かないのがこの漫画の魅力です。死んでしまっても「仕方がない」と幽霊が言ってしまいます。だからこそ、ラストのあのナージャのシーンはとってもよかった!

 文字びっちりのコラムも見所。昔の日本人がそんなにお米食べてるなんて知らなかったヨー。

 

同じ作者の『大砲とスタンプ』は第一話が全部読める試し読みがありました。

大砲とスタンプ / 速水螺旋人 - モーニング公式サイト - モアイ

こっちは兵站兵のお話。架空の国で、架空の道具とか出てきて、こっちのほうがSFかもしれないなあ。兵站おもしろいです。

 

大砲とスタンプ(1) (モーニングKC)

大砲とスタンプ(1) (モーニングKC)

 

 

 

 

『ヒヤマケンタロウの妊娠』(坂井恵理

ヒヤマケンタロウの妊娠 (Be・Loveコミックス)

ヒヤマケンタロウの妊娠 (Be・Loveコミックス)

 
ヒヤマケンタロウの妊娠

ヒヤマケンタロウの妊娠

 

 

ジェンダーSF。妊娠SF。

男も妊娠する世界を書いたお話。しかし、男が妊娠する確率は女の10分の1。この差が見事で、男が妊娠できるといっても、妊娠そのものに対する偏見や無理解は(少なくとも今の日本社会程度に)残っていて、ましてや男が妊娠するなんてめずらしい! という社会。

 

主人公のヒヤマケンタロウはできるサラリーマンだったのですが、妊娠をきっかけに、妊娠や育児について考え、周りを巻き込んでビジネスを立ち上げ社会を変えて行きます。

 

男が妊娠するというだけだったら、それほど珍しくもない(BLではわりとあります)のだけれど、「妊娠するのが男だったら?」という「もしも」をこの社会に代入し、妊娠に対する偏見を浮き彫りにして、さらにその偏見にどう向き合うか? という一つの解まで提示したことが、すっごくSF的だし、有意義であると思います。

 

これ、発売当初にTwitterですすめたら、かなりの人が買って読んでくれて、「おもしろい!」と言ってくれたのがよかった。友達が言ってたけど、主人公はあくまで男社会の中にいる、がっつり男ジェンダーなのですね。「これを機にビジネスにしよう!」と、男としての社会的な強さも武器にしちゃうような。

 

とはいえ、男ジェンダーの社会的強者だけでなく、男ジェンダーゆえに妊娠してしまって「男のくせに……妊娠なんかして恥ずかしい。怖い」と落ち込んでいる妊夫にもスポットをあてているのがバランスがとれていてすばらしい。高校生のカップルのエピソードもよかった。

 

ラストが希望があってよかったです。現代社会に対する痛烈な皮肉ですらある。ジェンダー方面はもちろん、SF方面でももっとがっつり語られてほしい漫画ですねえ。

  

 

 『メイドインアビス』(つくしあきひと

メイドインアビス 1 (バンブーコミックス)
 

 

秘境探索SF。

大穴「アビス」には、さまざまな奇怪な生き物が生息しており、その中にはお宝が眠っている。孤児のリコ(眼鏡少女)は、アビス探索中に少年型のロボットを拾う。そのロボットは記憶をなくしていた。リコはロボットにレグと名付け、一緒に孤児院で生活をすることに。あるとき、アビス探索中に死んだはずのリコの母親からの手紙が届いて……。

 

登場人物がとにかくショタかわいい。ふにふにした体と、緻密な背景がたまんないっすね! 孤児院での仲間たちとのやりとりもかわいいです。特に抜けてるくせになぜか自信たっぷりなリーダーシップを発揮するリコと、慣れない人間生活でおたおたするレグがたまりません。

 

「アビス」には「アビスの呪い」があって、下に降りれば降りるほど重くなります。「アビス」は降りる分には大丈夫なのですが(それでも怪物とかいて危険ではある)、地上に登ると体に支障を来たし、ある地点から地上に登ると死に至る(つまり二度と元の世界に帰れない)。少年少女にはシビアっすねー。黄泉の国みたいだ。

 

「縦方向の移動」って、なぜか読者の感動を誘うものがあるらしく、映画でも漫画でも少年が飛んだり、少女が落ちてきたりするんですが、少年少女が手を携えて深く深く降りて行く「メイドインアビス」も同じ感じがしますね。最終的に「行きて帰りし物語」だといいなあ……。

 

 試し読み。

メイドインアビス / つくしあきひと / まんがライフWIN

 

 

『WOMBS』(白井弓子)

 

WOMBS ウームズ 4 (IKKI COMIX)

WOMBS ウームズ 4 (IKKI COMIX)

 

 

ジェンダーSF。妊娠SF。戦争SF。

 

部隊は地球から遥か離れた植民星。長きに渡る開墾のすえ、ようやく人類はその地に文明を広げたが、遅れてやってきた人類が、曰く「正当な権利」を主張し、戦争を吹っかけてきたのだった。

そうして第一移民「ファースト」と、第二移民「セカンド」の戦争が起こり、20年。圧倒的不利にある「ファースト」だったが、唯一「セカンド」に勝っている点があった。「転送隊」通称「WOMBS」と呼ばれる、同一重力間転送を行える技術を持った部隊の存在だ。

「転送隊」は、現地生物である「ニーバス」の子を子宮に宿すことでこの力を得る。

マナ・オーガは、新兵ながら転送ポイントを作る「開拓者」の才能に目覚め、「セカンド」の首都攻撃のためにその力を発揮する。だが、自分の故郷がセカンドの侵略を受けていることを知ったマナは、徐々に疲弊し、ついには倒れるのだった……。

 

というところが四巻までのあらすじ。

 

それまで謎だった「セカンド」の実態もじょじょに見えてきましたし、いままで訓練と兵站輸送が主任務だった「転送隊」がみな前線に駆り出されることになり、話がいっきに動き出しました。

 

「セカンド」の無人の新都市で、自らが破壊した子供の遊具を見て固まるところや、「限りある資源と人材を使い果たした後はどうする?」と問われて、「セカンド」の人形が「次へ」と告げるところが好きです!

 

「セカンド 」のプロバガンダがひねくれてていいですね。自分たちは人類であり正規移民である。「ファースト」は不法移民であり、降参しなければあなたたちは準現地生物のカテゴライズからも外れる。と主張していて、正義が不在になり思想戦になった戦争って感じで好きです。でも、「ファースト」が絶対正義かというとそんなこともなく、現地生物である「ニーバス」の生息圏も奪っており、あまつさえその身に宿し、戦争の道具にしているという。誰もイノセントでない感じ、すごくいいですねー!

 

試し読み

IKKI PARA 試し読み 【WOMBS/白井弓子】

 

 

宝石の国』(市川春子

 

宝石の国(1) (アフタヌーンKC)

宝石の国(1) (アフタヌーンKC)

 

Kindle版もあり。 

 

これは……なんて言ったらいいんだろう。市川春子SF?

 

隕石が落ちて生物のほとんどが滅び、微細生物の働きで宝石に体が置き換わった。そしてその宝石を装飾品にしようと襲ってくる月人。

主人公のフォスフォフィライトは、弱くもろい。戦闘にも参加できず、仕事もできないフォスフォフィライトは、博物誌を編むように命じられる……。

 

市川春子氏のこれまでの漫画の例に漏れず、人体欠損と、人間であって人間でないもの。そしてあいまいな性が楽しめます。

 

とにかく絵も指先まで表現がすばらしいですね! それにいちいちエロいと思う……宝石同士触れたら壊れるって設定とか、いちいち肉体欠損するところに猛烈なフェチズムを感じる。

 

自分のことを「ボク」だったり「私」だったり、性別が不詳というか、ジェンダーが曖昧なところも好みです。

 

「月人」は仏像画のように、平面的に現れるところとか、漫画的にもとても面白い構図ですねー。

 

試し読み

宝石の国/市川春子 - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ

 

 

『エンチャント・ランド』(富沢ひとし

学園SF、超能力SF。

ぼくらの富沢ひとしがやってきたぞ! 

 

女子高生の青葉は、テレポート能力を持っている。飛び込み部復活のために、校長先生の孫と組むことになり、怪しい部活動たちが巻き起こす事件に対峙することに……。

 

テレポート能力の表現がとにかくすごい。

五円玉を中心として、世界を平面にして、巻き取るというもの。

つまり、三次元を二次元に折り畳んで、その二次元上を動く→三次元に戻したときに、瞬間移動している。というわけ。

漫画としての表現の説得力もだけれど、テレポートの表現としても理にかなっている。

というのも、四次元から見たら三次元は平面のように見えるわけで、たとえるなら、地図の上を歩き回るハエは、地図上の平面の世界から見たらただの点にしか見えない。ハエは自由に地図の上を歩き回って、地図上のどの場所にも現れることができるわけだけど、地図上の世界から見たら「突然現れたぞ!」となるわけです。(この説明で合ってるかな……)

 

状況説明を排して、変な敵がいっぱい出て来て、主人公がとにかく悲惨な目に遭う富沢ひとし氏のSFまんが。単行本化が楽しみだなー。

 

2013年12月現在、未単行本化なのですが、いまのところこちらから全部読めます。

エンチャントランド|画楽ノ杜 supported by Manga Planet(マンガプラネット)

 

あと現在『ゆめにっき』のコミカライズもweb連載中で、こっちはグロいはなんだかねちょねちょしてるわで、相変わらず不穏。最新話でとうとう包丁が出てきたぞ!

ゆめにっき / 漫画:富沢ひとし/原案:マチゲリータ/原作:ききやま / まんがライフWIN

 

 

『ひきだしにテラリウム』(九井諒子

 

ひきだしにテラリウム

ひきだしにテラリウム

 

 Kindle版もあり。

 

ショートショート。SFやファンタジー、コメディに昔話風のお話が33編収録されています。

 

こうだったらどうだろう? という発想を膨らませ、漫画の絵柄とコマで世界をつくる。漫画ってすごい! と素直に思える傑作です。 

 

好きな話は下の試し読みでも読める「ショートショートの主人公」と、「遠き理想郷」。想像力って無限大だー。

 

 試し読み。4編が読めます。

ひきだしにテラリウム | Matogrosso

 

 

ぼおるぺん古事記』(こうの 史代) 

ぼおるぺん古事記 (一)天の巻

ぼおるぺん古事記 (一)天の巻

 
ぼおるぺん古事記 三: 海の巻

ぼおるぺん古事記 三: 海の巻

 
ぼおるぺん古事記 (二): 地の巻

ぼおるぺん古事記 (二): 地の巻

 

 

神話SF。というか神話そのままですが。

 

古事記を物語にした漫画。ボールペンで描いた絵がすごい! 細かい!

 

それと、注釈がすごく面白い。ものすごくたくさんいる神のデザインが楽しいです。

 

試し読み。

こうの史代【ぼおるぺん古事記】

 

 

 

まだまだ半分のような気もしますが、ざっとこのあたりかなー。読み残したものもいっぱいある気がする……。来年はどんな漫画が読めるか今から楽しみです。

『ぼくらは水の中』Kindle書籍販売中

 

ぼくらは水の中

ぼくらは水の中

 

 

 Kindleで販売開始しました。

12月20日、21日限定で、無料キャンペーンを行っております。

 

この話は、同人誌『SUMMER CAMP vol.2』に収録したものを、前編リライトしたものです。

『サニー/レイニー/レインボー』ほどリライトしていないけれど、けっこう雰囲気が変わったと思うので、同人誌版も読んだよーという人がもしいても、Kindle版読んでくれたら嬉しいです。

 

これを書いたときは(2011年)、がっつりゲイの話じゃなくて、もっと友情と恋愛のあわいの感じにして、部活をテーマにしよう〜と考えていました。うまく書けたなあと我ながら思っています。

読み返すとやっぱりゲイ視点だし、何より部活もレギュラーとかでもなんでもない、劣等生視点だ……(でもだからこそ僕は書かねばならない!)こういうのは今も変わらないんだなー自分。と、しみじみ思いました。

 

というわけで、通常価格99円なので、ぜひ読んでくださいね。

よろしくお願いします。

 

『サニー/レイニー/レインボー』感想ありがとう&ちょっと著者解説

事後報告になってしまいましたが、KDP(キンドルダイレクトパブリッシング)『サニー/レイニー/レインボー』、9月6日と7日の二日間に無料キャンペーンを行っておりました。というのも、Kindle紹介サイトの「きんどるどうでしょう」さんにて、kindle無料ランキング連日一位である「風立ちぬ」の座を奪おう! そのために無料キャンペーンを行うよ! 企画に賛同してくれた人はサイトで宣伝もするよ! サイト内でもランキング発表するよ! という企画を行っておりまして、僕もそれに乗っかったのです。(第二回風立ちぬ杯のページ

 

こういうのはお祭りだから、参加することに意義がある……じゅ、順位とか関係ないじゃん?(震え声) と思っていたら、予想以上に多くの人にダウンロードされ、10位内にも入ることができました(第二回風立ちぬ杯結果発表のページ)。これもひとえに晋太郎くんの表紙イラスト・デザインのおかげだと思います。第一印象って大事ですね! 悠くんの作ってくれたロゴもいい感じに……!

 

それで何より嬉しいのは、実際に読者が増えたことで、さらに嬉しいことに感想ももらえたことです。ブログで書いてくださってくれたのはこのあたり。

 

「サニー/レイニー/レインボー」書評 - ペンと拳で闘う男の世迷言

[小説][KDP]藤丸心太『サニー/レイニー/レインボー』

[小説]サニー/レイニー/レインボー  みねこあ

 

うおおー! ちょううれしい!

 

読書メーター

【サニー/レイニー/レインボー】の感想 読書メーター

 

それと、けっこう初期の段階で感想をくれた二人。

 

【本レビュー】サニー/レイニー/レインボー うっちいのブロマガ~虹を見に行く~

藤丸心太『サニー/レイニー/レインボー』のご紹介 - SLEEPING BAG 

 

Amazonのレビューもつけてもらっています。

 

感想っていうのは、ひたすらありがたいですね!

読んでくれた人が(それも原稿用紙で300枚強という結構な分量で時間をかけて)、しかも感想を書いて伝えたいと思ったというところに、いやもうそんなにまでしてくれて本当にありがとう……! とただただ感謝です。がんばって書いてよかったー。Twitterでも感想をもらいました。うれしい。

 

能登の陰的な存在である、七尾のことを気に入ってくれてすごくうれしいですね。

 

 

せっかくだから、著者解説も少し。

 

この作品の構造的な話をすると、「登場人物を対比させてテーマを浮かび上がらせる」「失ったものを取り返しに行く」「最後のシーンで、最初のシーンにまた戻ってくる」という構造になっています。ノートに何も書けなかった能登が、最後に希望を語るというところですね。

 

あとジュブナイルですから、「成長を書く」というのはもちろん、「大人との関係を書く」「性欲や嫉妬なども書く」ということも意識しました。大人は、「乗り越えるべき壁」であり「主人公を導く賢者」でもあります。母親が前者で、ハッテン場で会ったサラリーマンのお兄さん(そういえば名前なかったな)が後者です。で、個人的にはこの「賢者」はダメ人間じゃないとダメなんですよ……! だって正しい大人って怖いじゃん。このサラリーマンのお兄さんはちゃんと仕事もしているけれど、未成年を飲酒や喫煙や淫行に誘うというアレなかんじのダメさです。

 

人が傷つくことも書きたかった。たとえばなにか誰かにひどいしうちを受けて、面と向かってその人に爆発するわけじゃないけど、心の奥底に静かに沈んで行って、知らず知らずのうちに陰鬱な思いになってしまう。その原因はわかっているのに、どうしてこんなささいなことを自分はいつまでもくよくよしているんだろう……とさらに暗くなってしまう。ああ、俺って小さい人間だなあ。傷ついたことをなかったことにしたら、自分の自尊心もなくなってしまった……。羽咋をはじめとして、登場人物がみんなぷりぷり怒ってるのは、自尊心を守るために怒ることを肯定したいと僕が思っているからです。心を持ってるかぎり、傷つくのはしょうがないので、怒ったり悲しんだりして向き合うしかないのでした。

 

僕はゲイであるということと、ゲイを書くということに誇りを持っているので、ゲイの話はこれからも書きたいっすねえ。今回ゲイ話でたくさんダウンロードされて読まれてうれしいなあ……。バディものとかブロマンスとか生温いこと言わないで、ゲイ二人のラブロマンスSFとか書きたいですね。世の中にこれといって意味もなく男女のロマンス物語があるように、これといって意味もなくゲイたちが宇宙の果てで恋愛したりする話とかですね!(荒い鼻息)

 

ぼちぼちですが、新作も再来月くらいには出せるかもしれません。

 

サニー/レイニー/レインボー

サニー/レイニー/レインボー

 

 

 

 

 

白井弓子×上田早夕里トークショー「日本の夏、SFの夏」に行って来た(9/3追記アリ)

もうだいぶ経ってしまいましたが、2013年8月11日に阿佐ヶ谷ロフトAで開催された、

白井弓子×上田早夕里トークショー「日本の夏、SFの夏」

に行ってまいりました。上田早夕里氏によるレポートはこちら。

 

トークショー、すごく面白かった。大森望氏の司会で、あっというまに時間が経ってしまいました。上田早夕里氏の『WOMBS』の読みが深く、18ページに渡る分析メモができたとのこと。すげえ。

おまけでアルメア軍曹の浴衣姿と、海で遊ぶマナのポストカードと、ペーパーを貰いました! ちょううれしい!

 

当日出た話で、覚えてるところだけ箇条書き。

発言はメモだけなのでけっこううろ覚えです。( )内は、僕の所見です。

 

 

・「ファーストガンダムは土」(白井)

 白井弓子氏がSFに触れたきっかけは、ファーストガンダムだった。そしてそれを土壌にしていろいろ生まれた……。しかし、「ファーストガンダムはSFじゃない」と当時の学校の人に言われた……と。そこで大森氏の、ガンダムSF論争というのがかつてあって……と言う話、上田氏も「私もSFじゃないって言われるんです」の話など。

(えっ、『華竜の宮』を書いてSF大賞も取ったのに、あれがSFじゃなくて何がSFだと……と思ったら、ちゃんとみんなに突っ込まれていました。「あれはSFじゃない」、つまり「SFの定義」というのは、昔からSFファンが続けている論争なのです。しかしこういう論争は思想を深める意味では有意義なこともあるけれど、たいていの場合は意欲を削ぐ結果になって何も生まない話……。「ガンダムがSFじゃない」って言われたことで、白井氏がSFを描いてなかったらと思うとぞっとするので、これはSFジャナイ! なんて話はやめとこーよ!)

 

・WOMBSの帯が、4巻でやっとSFをウリにしだした。(大森)

 4巻の帯が、「母なる身を戦場に捧げる」と内容の確信に触れている。SFということも明記しだした。1〜3巻では、はっきりSFということは明言していなかった。

(厳密に言えば一応「母」ではないことにはなっているので、「母」でないけれども。「SFは売れない」ということで、映画や小説、漫画では「これはSFです」と書かないのがセオリーみたいになっていて、SFファンとしては結構心苦しい事態。なのでSFだとウリにしだしたのは、SFファンにとってうれしいのです。そうですよ!)

 

・妊娠はプライベートなものなので、パブリックなものにしたかった。(白井)

 白井氏が妊娠中にあるテレビを見たときに、「妊婦を見ると突き飛ばしたくなる」と男性が発言して、その他の出演者(全員男性)も否定する人がいなかったことが、すごく心に残っていた。妊娠はプライベートなものなので、パブリックなものにしたかった。

(最近、一部で話題になっている「電車でベビーカーは非常識だ」という意見を思い浮かべました。僕個人的な意見として、ベビーカーが邪魔? いや、お前らも子供として生まれて来たんだろ。子供は決して奪うことのできない未来じゃないのかー! と思うのですけれども、まじで妊婦は迷惑だと思ってて、しかもそれをはっきりと明言しても社会的に受容されるということが、驚きと同時に深い失望を覚えます。「だから妊婦はあらゆる意味で守られなければいけない」というプライベートなところではなくて、「戦争という極限状態において、妊婦も駆り出されるならばどうなる?」というWOMBS。この視点に白井氏の信念を感じました。こういう風に、世界の状況を足し引きしてシュミレーションすることこと、SFの醍醐味ですよ!) 

 

・登場人物の名前がすごい(上田)

 主人公の名前は、マナ・オーガ。旧約聖書のマナ(神が天から降らせ民に与えた食物)を連想した。だが、オーガは化け物の名前で、いわば聖と悪が一つの名前で表されていて、マナ・オーガはただものじゃないな、と思った。

(白井氏はそこまで考えて名付けたかどうかはっきり明言しなかったです。けっこう重要な点かも。他にも「アルメア」「ケイ・シオタ」「ジェット」「ミミ」等、かっこいい名前多いですね。地球から移民して、多国籍ではあるけれど、黒髪のキャラには日系っぽい名前が付いてることから、それなりにルーツは生きてると推測されます)

 

・主人公が普通なのがすごい(上田)

 軍隊ものの話は、登場人物がエキセントリックなことが多いが、マナは普通で、同じ班のみんなも普通。普通の人間の話が描きたかった。

(普通の人間で、平和な日常を過ごしていたからこそ、それが戦争という状況に巻き込まれていくことに、生々しさがあります。すごい才能を持って外からやってきたヒーローではなく、地に足を付けて生きていて、弱さも抱えながら戦う人間たちだというこに、WOMBSの価値があります。)

(マナは「開拓」に「故郷のイメージ」が必要ということも、祖国、ひいては個人的な故郷のために戦うという被侵略戦争の側の気持ちを体現しているのかも。)

(でもその「守るはずの故郷のイメージ」を使って「攻撃」しなくてはならないという悲哀があるのだけれど。)

(だんだん、自分が何のために戦ってるのかわからなくなる……というのも、実に面白い。)

 

 

・マナはみんなの母親役になっている。(上田)

 まだ子どもを持っていないが、病弱な母の代わりに小さい弟の母親代わりになっている(ナビも弟の形を取って現れる)。軍隊の班でも、マリアが娘にベールを渡せないと嘆くときに、姉妹のならいいんだよと、自分のベールを渡す。

 

・ファーストもまた侵略者であり、イノセントではない。(上田)

 植民星化するにあたって、ファーストは星を改造し、現地生物であるニーバスの生息圏を奪って来た。

(ニーバスにとっては、ファーストもセカンドも同じ侵略者。テラフォーミング、もっと言えば生きるだけでイノセントではないという事実。こういうの僕はすごく好きなんですが、あまり賛同を得られなかったので、今回、上田氏から、ここがいいんです! と話を聞いて、「そう、そうなんだよ!」とうれしくなりました。)

 

 

・ニーバスとコミュニケーションがとれているわけでない。

 転送空間でニーバス器官が見せる幻影であるナビや、ワンピースを着た女性の姿をとって現れるニーバスのボスと「会話」するが、それが本当に意思疎通ができているのか、それとも人間の脳が会話を言語化しているのか区別ができない。

(『華竜の宮』の「アシスタント知性体」、『寄生獣』などを引き合いに出し、話をしていました。)

(僕はなるほど! と思ったけれど、SFに慣れてないと分かりづらい話かも……。たとえば、幻聴が聞こえたとして、実際は脳内で起きている現象にしか過ぎないけれども、本人にとってはリアルな声で、現実と幻想の区別を付けられない……というと分かりやすいかな。)

(「心があるのと、心があるように見えるのは区別できない」というチューリングテスト門外を思い浮かべました。) 

 

上田早夕里氏によるレポートで、『WOMBS』を的確に言い表してる部分を引用します。

 

 また、本作は、異文化・異生物との〈衝突と断絶〉の物語でもあります。それが、戦争という最も苛烈な形で噴出する構成になっています。ファーストから見ればセカンドは侵略者ですが、ニーバスから見ればファーストもセカンドと同じように侵略者です。そして、ファースト軍部内でも、同国人同士の〈衝突と断絶〉があります。主人公サイドの、この二重性、三重性(決して一方的な被害者ではない)は、物語に奥行きと深みを与えています。
 この〈断絶の物語〉への希望があるとすれば、それはどういうものになるのか。もし、希望など何もないという結論に至るのだすれば、物語の果てに待ち受けるものは何なのか。何らかの光が置かれるはずという最終刊の発刊が、いまから待ち遠しくてたまりません。

 

 

白井氏と上田氏の共通点がいろいろ見られたのもよかったです。

お二人とも中間管理職燃えだとか、バイオ系SFが好きだとか、妊娠あるあるとかそういうところで通じるところがあって、聞いてるこっちまで熱くなってしまいました。

 

そうそう、あと月刊誌で新連載も予定しているそうです。超楽しみだ!

 

『WOMBS』は書き下ろしなので、来年までお目にかかれないけど、それまでに白井氏の他の作品が連載で読めると思うとうれしいです!

 

イベントは、終了後に設定資料のコピー展示と、『WOMBS』にサインをしてくれるというサービスがあったのですが、僕はそこで抜けてしまいました。いや、今になって思えば描いてもらえばよかった……。アルメア軍曹。

実際は、ここで書いた話はごく一部で、2時間半くらいいろんな話がありました。2013年の夏のいい思い出になりましたよー。

 

WOMBS既刊

WOMBS 1 (IKKI COMIX)

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WOMBS 2 (IKKI COMIX)

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WOMBS 3 (IKKI COMIX)

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WOMBS ウームズ 4 (IKKI COMIX)

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おまけ

妊娠をパブリックなものにしている漫画、ということで、こちらもおすすめ。

ヒヤマケンタロウの妊娠 (Be・Loveコミックス)

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ヒヤマケンタロウの妊娠

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あれ、いまKindle版しかない?

現代社会で、男が妊娠したらどうなる? という世界を描いた良著。マストバイ。